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「音楽が持つ、平和の使節としての特別な力」を再確認すべく、1995年にサー・ゲオルク・ショルティによって創設されたワールド・オーケストラ・フォア・ピース(WOP)の活動は、音楽を通して、あらゆる調和と共存を表現している。
創設のきっかけとなったのは、1992年にチャールズ皇太子とダイアナ妃の主催で開かれたショルティ80歳記念演奏会である。このとき、謝辞の中でショルティは次のように述べた。
「先ほどから、ある一つの思いが脳裏を離れません。私たち音楽家はヨーロッパを――そして世界を――ひとつに結びつけることができる。なんと素晴らしいことでしょう。同じことを、政治家もできないはずはないと思うのです」
この考えに賛同する世界40カ国あまりの81人の音楽家たちが、1995年ジュネーブに集ったのである。
WOPは世界各地のオーケストラに所属する演奏家(それぞれの所属楽団ではコンサート・マスターやセクション・リーダーを務める者も多い)によって構成されており、平和を訴えたり、復興を記念する行事があるときのみ結成される。
WOPの現場はユニークである。世界各地の演奏者に招集をかけることひとつをとっても、大変な調整を要する。どんなに優秀なプレーヤーであっても自らの地位に固執することは許されず、シーティング・ポジションやセクション・リーダーは演奏作品によって入れ替わる。世界のさまざまなオーケストラに所属する演奏者で構成されるため、それぞれが普段演奏しているピッチも異なり、チューニングが難しいこともある。
団員たちは金銭的な報酬は受け取らないが、そこに息づく精神に賛同し、その体験に意義を見出し、声がかかれば世界各地から集まってくる。
現在の団員は35カ国70のオーケストラに所属する総勢91名から構成されている(2010年8月現在)。なお、1997年9月にショルティが急逝して以降、ショルティがかねてから後継者としてこのオーケストラを託したいと願っていたヴァレリー・ゲルギエフが中心となり、オーケストラの活動を行なっている。